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Spanish Bar El Cortador

〒553-0003
大阪市福島区福島7-8-6 中村ビル1F

TEL.0676512252

【生ハムとは?】

スペインのバルやイタリアのレストランで、生ハムの原木から一枚ずつ丁寧にスライスして提供される生ハム。一方、日本ではコンビニやスーパーで手軽にパック詰めの生ハムを購入できます。どちらも「生ハム」と呼ばれますが、実は製造方法も味わいも全くの別物です。
「生ハム」と聞いて、どんなものを思い浮かべますか?おそらく多くの方が、コンビニやスーパーで見かけるパック詰めの商品をイメージされるのではないでしょうか。実はあの商品、日本独自のスタイルなのです。
本場ヨーロッパの生ハムは、豚の後ろ脚(もも肉)を塩漬けし、長期間じっくりと熟成させて作る伝統的な保存食です。この「もも肉」を使うからこそ、スペイン語でハモン(Jamón)、フランス語でジャンボン(Jambon)と呼ばれます。ちなみに「もも肉=ハムストリング」。豚もも肉を使ったものが正真正銘の“生ハム”なのです。

日本のスーパーやコンビニで売られているパック詰めの生ハム(※スペイン・イタリアから輸入されたハモンのスライスパックは除きます)は、ヨーロッパの伝統的な生ハムとは全く異なります。これらの商品は、豚肉を冷凍加工し、還元水あめや調味液に漬けて味付けしたものです。北海道の郷土料理「鮭のルイベ」(冷凍した魚を解凍せずに薄くスライスして食べる料理)をヒントに開発されたと言われています。もも肉以外の部位も使用します。燻製したものもありますが、これらは本場ヨーロッパの生ハムとは製法も素材もまったく違うのです。もちろん、日本製法の生ハムも手軽でおいしい食品です。ですが、ヨーロッパの伝統的な生ハムとは別物、とご理解いただければ幸いです。

生ハムを極める職人「コルタドール」

スペイン語で「切る」を意味する corte(コルテ)。
生ハムを専門にカットする職人は Cortador(コルタドール) と呼ばれています。

生ハムは「切り方ひとつ」で味わいが大きく変わる繊細な食材です。熟練したコルタドールの手によって美しくスライスされた生ハムは、口に入れた瞬間、体温で脂がとろけ、まろやかな甘みが広がります。さらに、赤身の凝縮された旨味が後から重なり合い、口の中で芳醇なハーモニーを奏でます。

コルタドールは、チャルクテリアと呼ばれるスペインの肉製品専門店で活躍しています。フランス語ではシャルキュトリと呼ばれ、日本でも食に関心の高い方には馴染みがあるかもしれません。また、結婚式やパーティーなどの華やかな場にも呼ばれ、目の前で生ハム原木をカットし、美しいお皿を仕上げていきます。その姿は、まさに“食の演出家”とも言えるでしょう。

【プロが使う生ハム専用の道具】
生ハムのカットには、専用の道具が欠かせません。
・ハモネロナイフ
よくしなる、細長い専用ナイフ。しなりがとても重要です。脂身の柔らかい部分と赤身の固い部分を同時に、美しくスライスするために必要不可欠な道具です。
・ハモネロ台
生ハム原木を固定するための専用台。安定した状態で安全に、かつ美しくカットするために使用します。

私も生ハムを切り始めた頃は「なぜあんなにしなるナイフが必要なのか?」と疑問に思っていました。試しに牛刀や筋引き包丁でカットしてみると…全くうまくいきませんでした。専用ナイフを使うと、不思議なくらいスッと綺麗なスライスができるのです。
しなるナイフは、脂身と赤身を同時に切る際の微妙な力加減をしっかり伝えます。適度なしなりと、しなりをキープするコシが、生ハムをカットするハモネロナイフには欠かせないのです。
本物の生ハムの魅力、そしてそれを最高に引き出す職人の技と道具。ぜひその違いを知って、生ハムを楽しんでみてください。

参考文献 一般社団法人日本生ハム協会 発刊
生ハム教本
生ハムのマニュアル
https://jcha-ham.com/